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HOME > 鵬玉会 > 夢録 > 五 天然理心流九代目宗家 近藤勇ご遺族 宮川清藏勇武先生 > 宮川清藏勇武先生2 > 宮川清藏勇武先生3
8)「八代目はお預かりし、将来は本家にお返しする」加藤伊助先生
武田 大変失礼な話ですが、どんな武道団体でも、そのようなときにはもめたり、袂をわかったり、というのがつきもののように思いますが、もめなかったんですか?
宮川先生 他に高弟も何人かいらっしゃいましたし、いろいろあったようですが、加藤先生はこうおっしゃいました。「この八代目はお預かりするだけにします。将来本家にお返しするのが筋なので、この宮川君がその域に達したらお返しするよ」とおっしゃいました。そこで「将来本家に返すなら、八代目としてお預かりするのはいいんじゃないか」という流れになったんです。
武田 なるほど。頑張らなくてはいけなくなったんですね。天然理心流に近藤勇以来の本家が戻ってこられた感じになったんですね。
宮川先生 昭和50年、高幡不動尊で「新選組を語る会」が開かれました。そのときに天然理心流演武の要望があり、加藤先生が「では宮川君、一緒にやろう」ということで演武することになりました。
近藤勇は宮川家から近藤家に養子に行きました。その生家の血をひいている意識をやはり持たざるを得ませんでした。勇に対しては、五代遡ることにはなりますが、私にとってはおじさんという印象です。
9)板橋の刑場、そのときの近藤勇の心境は
武田 近藤勇を身近に感じたのはどんなときですか?
宮川先生 不思議な話かもしれませんが、池田屋とか京での活躍の数々であるとか、というよりも、板橋の刑場に連れて来られたときの心境の方を身近に感じるんです。
武田 それはなぜでしょうか。
宮川先生 それは、私にとってはおじさんだからだと思います。
武田 身近なおじさんなんですね。
宮川先生 勇五郎からの伝えなんですが、勇は「今まで大変世話に相成った。礼を申す」と頭を下げたそうです。そのときの心境をよく考えます。天皇を守ること、徳川を守ることが臣下としての義であり、道であると考えていた。それがいつの間にか徳川は賊軍になった。そういうものからやっと解放されるとう安堵感があったでしょう。そしてそれと同時に「どうしてなんだろう?」という気持ちがあったと思います。
武田 「どうしてなんだろう?」と言いますと?
10)恨み言を一言も言わなかった近藤勇
宮川先生 彼は恨み言は一言も言ってないんですね。
武田 そう言えば、今の人なら悪しざまに言ったり、ののしったりしそうですね。
宮川先生 勇は一言も言っていません。ただただ、君恩に報いられないことが残念であると言っているだけです。逆に言えば、その噛みしめた唇の奥にある無念さ、その深さを感じることができるように思います。彼には本当にいろいろな時期がありました。たとえば浪士組に入ったとき、絶頂期、たとえば鳥羽伏見の戦いで負けて江戸へ帰ってきたとき。でも、その間わずか五年です。板橋の刑場では、この五年のひたすら君恩に報いようと生きてきた日々のことを思い出したでしょう。でも、普通の人の一生分くらいを五年で駆け抜けたのかな、と思います。
武田 新渡戸稲造の武士道でも読みましたが、わかりやすく言えば、私よりも公を優先することが武士道の基本でもあります。これは現代の組織人にもつながることですから、そう考えると近藤勇の無念さはさらによくわかるような気がします。
宮川先生 そうですね。ひたすら天皇を、徳川を、と考えて生きてきたわけですからね。
武田 私も会津の近藤勇のお墓に行きました。
宮川先生 ああ、そうですか。ありがとうございます。
武田 会津中将松平容保公、土方歳三、そして無外流斉藤一が動いてできた近藤勇のお墓は、会津が見渡せる山の中腹にあります。立派な場所、立派なお墓でした。あそこに立ってみて、容保公からも頼りにされていたことを感じました。
宮川先生 あれだけの場所を与えられたんですからねえ。「社会公共 国利民福を企て、それを実行するために理心流を使いなさい。そして天下を治平に導きなさい」という理心流の教えをもって新選組を命がけ作ったんでしょう。京都で治安にあたったんでしょう。疑いもせずに。
武田 では、宮川先生が宗家を継がれたときのことを教えていただけますか?
次回夢録 その六は・・・
宮川勇武先生インタビュー後編です。
ついに近藤勇以来の方の元へ天然理心流宗家が継承されます。
そして天然理心流をやってみて初めてわかる近藤勇の心をお届けします!
それは武道に志す、全ての方に通じる心になるでしょう。
ご期待ください!
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