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15) 無外流三代宗家 都司文左衛門の伝書に出てくる「無外流居合」という表現
▲剣聖 二天一流の宮本武蔵。新選組では服部武雄(御陵衛士に参加)が二刀流だったというが、油小路事件で落命。 |
新名宗家 無外流では、合わせて自鏡流の居合をやっていました。その自鏡流居合をやっていた者のほとんどが無外流の人たちだったもので、三代都治記摩多資英の伝書には「無外流居合」と書かれるようになりました。
宮川宗家 相当古い話ですねえ。
新名宗家 俗に言う二刀流、二天一流の剣聖宮本武蔵が亡くなったのが1645年、流祖辻月旦が生まれたのがそれより遅れて1648年です。
宮川宗家 宮本武蔵没後三年に生まれたんですか。随分長い歴史ですね。
新名宗家 1693年に無外流を名乗りますから、2014年で321年になります。辻月旦の弟子から先が土佐、姫路を始め大名36家を超え、根付いたと言われますが、その土佐無外流も川崎善三郎先生で消えました。
宮川宗家 歴史は残酷ですねえ。土佐と言えば、土佐の山内容堂侯は無外流だったと言いますね。
新名宗家 本当かどうかわかりませんが、2mの高さの木の枝から飛び降りながら抜き、着地するまでに納刀できたと、司馬遼太郎先生が書いていらっしゃいますね。
17) 命をギリギリ守る刃境を知れ
宮川宗家 各流派それぞれ大変な時代があったんでしょうね。
新名宗家 私は思うんです。どんな流派も無外流も私たちの組織の中の者も、もし殺し合いの中にあれば、理屈は簡単なはずだと。たとえば、無防備に手を出して抜こうとしたとしたら、どんな流派でも簡単に殺されてしまうでしょう。そこは命をギリギリに守る刃境なのに、今やそれを考えず腕を伸ばす者のなんと多いことか。
宮川宗家 刃境。いい言葉ですよねえ。
新名宗家 能書きではなく、形で斬れなければ意味がないと思うんです。組織の内外問わず、私は置藁で斬れたら初めて話を聞こう、ということにしています。
宮川宗家 ふむ。
新名宗家 しかしその斬り方も、形の理合のうちにある。斬るか斬られるか。いざ、というときに初めて間合いに入っていくわけです。だからタメもある。無防備に手だけ出ていくことはありえません。手だけ出すなら、相手は黙っていませんよね。
宮川宗家 そうですよね。
新名宗家 手を斬り落としてしまいます。抜き打ちでは鞘をひき、いくぞというときにはタメを活かして一気に斬りにいきます。
宮川宗家 なるほど。
18)脇構えに知る!近藤勇の心
▲新選組 近藤勇局長 |
新名宗家 間合いというのは考えれば考えるほど奥が深い。天然理心流の脇構えで近藤勇が立っているのを考えるといいですね。刀身の長さもわからないから間合いが想像つかない。普通ならなかなか飛び込めませんね。
宮川宗家 ええ。そこに近藤勇の心があるように思います。
新名宗家 普通は道場で教えない技があります。ようやく教えてもいいレベルになった弟子には教えますが、そのときに、「いや、実は相手が脇構えだったらどうするか」とか研究するのは楽しいですね。
宮川宗家 いや、面白いですねえ。新名宗家のお話は刺激的です。「だったら、あんな攻撃はどう対応するか」と自分の頭の中にもいろいろな想定が浮かびますね。
新名宗家 突き詰めれば体捌きだと思います。剣道なら「浅い」とかになってしまうでしょうが。浅かろうが深かろうが、刀の身幅分だけ頭に斬りこめば、死を与えることができるわけですからね。
宮川宗家 なるほど、命の奪い合いですね。
新名宗家 殺し合いという前提で考えればいろいろ納得できる話がありますね。工夫し、研究するのが一番おもしろいです。新当流で相手が下がった、こちらが踏み込んでこめかみを斬っていく形がありますね。
宮川宗家 はい。
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