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HOME > 鵬玉会 > 夢録 > 十六 兼國先生 1 > 十六 兼國先生 2 > 十六 兼國先生 3
9) 無監査刀匠
武田 銀座の刀屋さんはこうおっしゃっていました。「今の時代のトレンドは、鎌倉時代の刀です。言わば正宗を復刻するというようなことが人気がある。その中でこの兼国先生親子は大阪新刀がお好きなんです。その復刻をさせたら当代一なんです。そして無監査刀匠です。それは刀匠の最高位、250名くらいいる刀匠の中でベスト10にいらっしゃるような方です」
兼国先生 無鑑査刀匠は今16名ですね。私は大阪新刀が好きですね。
武田 もう一つ知りたいのはなぜ大阪新刀だったんだろう?ということなんです。
兼国先生 大阪新刀、助広の刀は美しいと思います。武器である基本があるからだと思います。もちろん他の刀も美しいと思いますが、なぜかやはりそこに魅かれます。
武田 刀匠と実際に刀を愛する方達、それも居合をする方達や、これからやってみようという方達は切っても切れない関係にあると思います。そんなこれから刀を触る方達に何かお言葉をいただけませんか?
10) 目の前の課題に精一杯向かい合う
兼国先生 刀匠というのは修業が長いんですね。まずは五年の修業が試験を受けるための最低条件です。
武田 試験があるわけですね。
兼国先生 五年たったからと言って認められるわけでもありません。ある一定の段階までいかないと認めてもらえないわけです。今目の前の課題に精一杯向かい合う。あるとき、今までできなかったことが急にできるようになるんです。居合もそうなんじゃないでしょうか。
武田 なるほど。そうですね。
兼国先生 父からいろいろ言われました。頭ではわかっていても、簡単にからだは動きません。ところが修行と言うのは不思議ですよねえ。昨日までできなかったことが急にできるようになる。
武田 何か積み重ねがあるんでしょうか。目に見えない、あたかも紙を積み重ねるような。
11) 鍛錬した人の魂を手にして居合に向き合う
兼国先生 居合をする方が手にした真剣。それは誰が作ったものかはわかりませんが、一所懸命、魂をこめて鍛錬した人がいるんです。その魂を手にしていると考えて鍛錬すれば、何か得るものがあるのではないか、と思います。
武田 その居合は、ひょっとしたら自分だけの力ではないかもしれませんね。刀匠の精神や、関わった方達の気持ちにも感謝すべきなのかもしれないですね。
兼国先生 (笑)。
12) 手を抜けば必ず最後に傷になって出てくる
武田 刀を作る上で難しいところはどこでしょうか。
兼国先生 全てですねえ。父からは「どこにも手を抜くな。手を抜けば必ず最後に疵(きず)になって出てくる」と言われました。
武田 居合を雑にやるな、丁寧に身につけて行け、というのと共通ですね。後で苦労するわけですから。
▲緒田信長も参詣した八幡神社。信長もここで下馬した。この標は織田信長の建立によるもの。兼国先生が連れていってくださった。 |
兼国先生 どの道もそうなんでしょうが。
武田 そういうごまかしがない姿勢が、今見るお顔や物腰からもうかがえます。
兼国先生 (笑)。刀というのは研ぎあげられて初めてなんらかの問題、傷が見えてくるんです。それは作刀工程の中で足りなかったものです。焼きを入れるまではわからない。
武田 そうなんですか。
兼国先生 だから最初からどんな工程であっても手を抜かず、きちんとやらないといけないんですね。
13) 一所懸命やれ 手を抜くな
武田 どんな武道でも基本を重要視すると思います。そこをおろそかにするといずれ基本をやり直さなければならなくなる、というのに通じているかもしれませんね。
兼国先生 作刀の途中で「これは駄目だ!」となるとそこで作業はストップです。
武田 捨ててしまうということですか?!
兼国先生 そうなんです。使いようがありませんから。そんな思いをしないよう、「一所懸命やれ、手を抜くな」とよく言われました。鍛錬所をお見せしましょうか。
武田 よろしいんでしょうか?ありがとうございます。
13) 覚悟がある鍛錬所
兼国先生のお母様 鍛錬所を見られたらいいですよ。修業は五年とは言いますが、鉄に触るどころか、炭を切る「炭切り三年」と言う世界です。ようやくそれで認められて弟子になるような世界なんですよ。それでも刀では食っていけないかもしれない。そんな大変な所です。
武田 凄い覚悟が必要ですね。
兼国先生のお母様 だから先代も最初は反対したんです。
次回夢録 その十七は・・・
刀の鍛錬所でどうやって素晴らしい刀をつくられるのかを聞きます、
ご期待ください!。 |
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経験がなくても、老若男女を気にしなくても
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