■後に新選組の幹部となる若者たちがその道場に集っていました。市ヶ谷にあったという試衛館。その近く、神楽坂にあるのが牛込総鎮守の赤城神社。きっと青春時代の近藤勇、土方歳三、沖田総司。永倉新八、斎藤一が足を運んだに違いありません。新選組が戊辰戦争の際に下総流山まで流れたとき、そこにあった神社も同じ流れをくむその名前も同じ「赤城神社」でした。青春のころを思い出し、懐かしく思ったかもしれません。 ■2017年6月25日、近藤勇ご遺族であり、天然理心流9代目宗家の宮川清蔵勇武先生をいただく勇武館と無外流居合鵬玉会はこの赤城神社で演武をしました。朝からの雨が、演武が始まった瞬間にやんだのも「ちゃんとあなたたちを応援してくださっているのだと思いました。」(赤城神社宮司) ■その試衛館に参加した斎藤一のご子孫の夢録後編です。どのような方もそのご家庭の風土の中でお育ちになられ、その考え方や行動、判断の仕方はその風土の影響の中にあるはず。その風土を作ったのはお父さまお母さま。そのお父さまもさらにお父さまがいらっしゃるわけで、今のご子孫のお人柄を通してみれば、ご先祖のご様子、たたずまいも想像できそうです。 ■今回お話した中で、問題がなさそうな部分のみを抜粋してご紹介しようと思ったのは、そういう些細な話の奥に、ひいお爺様である新選組三番隊隊長であった斎藤一さんのお姿が見えるような気がするからです。 ■ただし、ご子孫は表に出られることをあまりお好みにならない方なので、あくまで「藤田さん」としてご紹介したく思います。 (インタビュー 武田鵬玉)
新選組三番隊隊長直系のご子孫とついにお会いすることになりました。 表に出られない方なので、「藤田さん」とだけお伝えしますが、そのお話はぜひご紹介したい内容でした。
10)居合の中でも無外流を選んだ 武田 私は武道歴だけは長くて、中学時代に極真空手の門をたたきました。福岡の大会で優勝したこともあります。 藤田さん なぜそこから居合を? 武田 東京に出てきたときに、最初は仕事関係で誰かが武道としての居合をしなければならなくなりました。いろんな流派を先入観なしに見に行ったんです。 藤田さん そうなんですか。 武田 無外流を見たときに「あ、基本を丁寧にしている」と思いました。あとあと極真空手の創始者故大山倍達総裁が「いろいろ居合を見たが、無外流が最も実戦的に見える」とおっしゃったことがあるのを知ったときに「俺の目は間違ってなかった」と思いました。(笑) 藤田さん ほう。 武田 実は無外流と新選組斎藤一さんの関係を知ったのもその後なんです。「燃えよ剣」以来のファンだったので嬉しかったし、稽古を重ねるにつけ、「こんな気持ちで刀を扱っていたのか、所作をしていたのか」と感じることも多くて。 藤田さん 感じますか? 武田 浅田次郎先生の作品「輪違屋糸里」の中で、神道無念流、剣術では最強の永倉新八と斎藤一が土蔵で向き合って動けなくなる描写があります。斎藤一は居合なので、座っているが、相手が動いた瞬間に抜刀できる。そこで動けなくなる、というシーンです。こういう居合の描写と私たちの稽古するものがダブって感じられてたまらないなあ、と思います。 11)抜刀する 藤田さん 抜刀するというのは難しいですか? 武田 形(かた)の上では二の太刀がありますが、本当は居合は初太刀で勝負を決する剣です。「居合の本義は抜刀の一瞬にあり」と言います。それを前提に考えると、相手もこちらも抜刀できるかどうか、というのは難しいように思います。相手が抜刀すると思った瞬間にはそれをさせまいと対応するわけです。 藤田さん なるほど。 武田 そういう技は宗家からちゃんと稽古させられています。新選組では入隊後「覚えている形は、一つだけにしてそれだけ稽古しろ」と言われたそうですね。私なら、「抜刀させない」形だけ熱心に稽古すると思います。(笑)これなら何流だろうが関係ない。 藤田さん (笑) 12)斎藤一さんの剣の心、志を継いでいるのは私達だ、と思って 武田 しかし、本当は生き死にの技術においては何流か、というのもそもそもあまり関係がないような気もするんです。たとえば研究が進んで、斎藤一という方が、実は聞いたこともない流派だった、ということがわかることがあるかもしれません。それが明日かもしれない。でも、私は慌てないような気がします。 藤田さん ほう。 武田 広く居合という意味で考えてもつながるんじゃないか、と思います。そして、「実際に斬る、命を懸けるための実際の間合いで組太刀を稽古する、初太刀で勝負を決するための研究をする。」そんな流派、組織はそう多くありません。少なくとも鵬玉会はそれを目指します。そんな点で斎藤一さんの剣の心、志を継いでいるのは私達だ、と思っておけばいいんじゃないかと思うんです。 藤田さん 多分本人も固執していないのでしょうね。言い残しがないのですから。(笑)
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